2022/01/16

パワプロ2022のサクセスは面白いのか?

 
 
結論から言うと「面白くない」です。
誤解を避けたいのですが私は別にアンチがしたいわけでもパワプロ2022を楽しみにしていないわけでもありません。パワプロシリーズには頑張って欲しいですし、パワプロ2022も面白いパワプロを期待してそれなりにワクワクしています。

しかし、断言できますがパワプロ2022のサクセスは面白くありません
仮にパワプロ2022のサクセスを面白く作られたとしたら、それはゲーム業界に対する革新であり全てのゲームがパワプロ2022のサクセスを目標としパクり参考にするでしょう。
 
そんなことは不可能です。任天堂の精鋭チームでも難しいでしょう。
昔は違いました。パワプロ2016のサクセスなどはお世辞にも良い出来とは言えませんでしたが、それでもゲームとして見れば十分面白いサクセスと言えました。
 
今は違います。パワプロがつまらなくなったのではありません。
ゲームにおけるユーザーの要求水準がサクセス周りだけ異常に高くなってしまったのです。
単純にハードルが高くなった。とも言えます。
 
皆さんが昔楽しんで遊んでたサクセスも、今遊んだら退屈に思えてくるのではないでしょうか。
ゲームの水準は年々上がっており、いつまでも色褪せない名作があるように「もう耐用年数を過ぎてしまったゲーム」というのも確実に存在します。 パワポケR今なら2000円で買えます。
 
しかしゲーム業界を見渡してもそんなにすぐにユーザーのハードルが上がることはありません。こういうのは10年単位で進化していくものですからね。
しかしサクセスに限って言えばもう数年前のサクセスですら現代では通用しない旧時代の異物になってしまっています。
 
なぜサクセスのハードルだけがこんなにも高くなったのか?
まあ結論から言うとウマ娘が原因なのですが今回は時系列順に考えていきましょう。
 
 
 
注意
※この記事は筆者のこれまでのパワプロへの思いの丈を書き殴ったのでメチャクチャ長いです(1万2000字)
※途中からウマ娘の話になりますがちゃんとパワプロの話に着地させるのでご安心ください

※これはいつものことですが私は意図的に荒い(悪い)表現を使うことがあり、今回は思いの丈を書き殴っているのでその頻度がいつもより多い気がするので警戒(何?)してください



ゲームの歴史が動いた年
2013年 実況パワフルプロ野球2013発売

パワプロ2013はシリーズで初めて(だよね?)サクセスに課金要素が搭載されました。
感謝価格とし値段は3980円という格安設定。
課金要素でユーザーから搾り取る気だろ! とこの商法は当時インターネットでメチャクチャ叩かれました。サクセスのグラフィックが見るに堪えないクソみたいな旧時代の3Dポリゴンになったのもこの作品でしたね。

ネットでは非難轟々だったこの2013ですが、実はサクセスはかなり面白いです。
後のアプリパワプロ、シャニマス、ウマ娘などの基幹となるデッキシステムという発明を生み出した実は偉大な作品なのです。
 
課金要素にしたって当時のインターネットは課金要素に対して敏感になりすぎてる嫌いがあり、同時期に発売されたジョジョASBなども課金要素の存在でありとあらゆる非難が浴びせられました。
課金要素があると言っても今のソシャゲと比較すれば全く良心的な範疇ですし、そもそも課金要素を使わずとも十分楽しめるようには作られていました。現にデッキシステムはパワプロアプリを始め多くのソシャゲの根幹となる偉大なシステムとなっています。
 
 
多大な批判を受けたものの、サクセスは面白かったのだから批判を気にせずこの路線で突っ走れば良かったかもしれませんが、KONAMIパワプロチームはユーザーの意見を拾い上げるのは遅い癖にネットの声を気にして方針を右往左往するという風見鶏的でゲーム制作に信念がない部分がありこのデッキシステム&課金誘導路線は2016で完全に終焉しました。
 
ただ今でも課金要素に敏感なユーザーは一定数いるので、ファミリー向けに商売するパワプロが子供に安心して遊ばせられる買い切りの方向に舵を戻したのは方針としては決して間違いではありません。
ただデッキシステムだけでも残しておけばサクセスの遊び方に多様性とゲーム的面白さの幅を持たせられたと思うのですが……。


KONAMIの懐が潤った年
2014年 パワプロアプリリリース


2013で培われたノウハウを活かして2014年12月にリリースされたのがパワプロアプリ。
私は全く遊んだことがないので細かいことは言えませんが(1回インストールしてちょっと触っただけ)
ナウなヤングにバカウケし課金要素でジャブジャブ儲けKONAMIを代表するアプリとなったと聞き及んでおります。
恐らく本家パワプロの売上とは比較にならないほどの収益があったと思われる。
 
このアプリが莫大な収益を上げたことで停滞が続いていた本家コンシューマ版パワプロも開発に力を入れるようになったりするなど変化をもたらしました。
それも根幹にあるのはパワプロ2013のデッキシステムなので、やっぱりパワプロ2013は偉大でした。


思えば2016の高評価が逆にサクセスの停滞に繋がったのかもしれない
2016年 パワプロ2016発売

2014から2年の時を経て満を持してPS4で発売された本作。サクセス20thのシールが赤く光ります。
オリジナル球種作成、パワプロで最も面白いモードである栄冠ナインの復活、名作パワフェス、グラフィックの2D化など多くの要素を盛り込んだ本作は多くのユーザーから高い評価を得ました。
パワナンバーをインターネットにアップロードし多くのユーザーが共有できるようになったのも本作からでしたね。
 
2016は文句なしの良作ですが、しかしサクセスに限って言えばデッキシステムの代わりに追加されたパワマップという要素はゲームとして全然面白味に欠けるシステムで2013、2014のデッキシステムと比べると間違いなく劣ります。
ネットではグラフィックが2Dに戻ったことでサクセスも良くなったと思っている人を見かけますが、いくらグラフィックがPS1並の見るに堪えないポリゴンでも2013、2014のデッキシステムを活かしたサクセスのゲーム的な面白さには全く追従できていません。

デッキシステムを捨てた時点でコンシューマパワプロのサクセスがアプリを超えることは難しくなりました。
デッキシステムはゲームの歴史に残るレベルの大発明なので、デッキシステムの代わりに別のシステムを搭載する。というのはとても難易度が高いのです(パワマップ……)
 
 

新時代のゲーム
2018年 アイドルマスター シャイニーカラーズリリース

2018年にリリースされたアイドルマスターシリーズの完全新規ブランド作。
スマホアプリではなくブラウザゲームという特長があり、バンナムのエンザというプラットフォームを今や一人で支えています。
 
さてそんなアイマスの完全新規コンテンツですが、なんとやることはパワプロのサクセスと全く同じ!! えー! そんなことやっていいのーー!?



 
 
 
 あっはい
 
 
 
しかしシャニマスはただパワプロのサクセスを丸パクリしただけではなく、テンポ、ゲーム性、シナリオ、音楽、BGM、演出、イラスト。全てのクオリティでパワプロを圧倒的に凌駕する超高品質なサクセスでした。
 シャニマスを面白い方のパワプロとするなら、パワプロはつまらない方のパワプロです。
シャニマスを城島健司だとするならパワプロは小林誠司です。
シャニマスが柴田政人だとしたらパワプロは柴田大知です。
 
 
このシャニマスの超ハイクオリティサクセスはゲーム界に震撼を与え旧時代のコンシューマパワプロのサクセスは一瞬で陳腐化しました。
パワプロがつまらなくなったのではなく(昔の方がサクセスは面白いけどね)進んだ時代に対応できなくなったのです。奇しくもサクセス、デッキシステムというゲーム史に残る二大発明を生み出した本家パワプロが。
 
シャニマスリリース後もパワプロ2018、パワプロ2020と発売していますが、本家パワプロが進んだ時代の新たな流れを取り入れるということはなく、やったことは形だけの3年サクセスとパワマップもなくなりいよいよ何の特長もなくなったサクセスと、時代が恐竜的進化を遂げているのにも関わらず昔を懐古するユーザーの声を真に受けて意味のない先祖返りを繰り返しただけです。
 
「昔の方が良かった」これはことパワプロのサクセスに限れば真実ですが、時代が異常な速度で進化しているのに昔に戻っても対抗できるわけがありません。KONAMIパワプロチームのユーザーの意見を拾い上げるのは遅い癖にネットの声を気にして方針を右往左往するという風見鶏的でゲーム制作に信念がない部分がある悪い方に出てしまった結果がサクセスの陳腐化です。
 
シャニマスの出現でユーザーのハードルが大きく上がっただけでも決定的なのに、2021年にはついにあのゲームが出ます。
 
 
 
最強のゲーム
2021年 ウマ娘リリース

 
出ました。今や日本一のゲームと言っていいでしょう。
美少女と競馬の歴史、光と闇が交差する驚異のゲームアプリ。
 
ウマ娘は多大な成功を収めました。その理由には実在の競走馬へのリスペクトだとか競馬ファンがニヤリとする要素だとか新規ファンを競馬に誘う導線だとか言われてますが全部の後付の理由です。何ならそれはゲーム成功の理由ではなくアニメ成功の理由です。
 
ウマ娘が成功した理由は「ゲームが面白い」これに尽きます。
とにかくウマ娘は面白すぎるのです。この面白さの前では他のゲーム、とくにウマ娘同様サクセスシステムを搭載してるゲームは叶いません。
ウマ娘がイチローだとしたらシャニマスは高山俊です。パワプロは中学野球レベルです。
 
シャニマスによって一世代遅れにされたパワプロのサクセスは、ウマ娘によって五世代遅れにされてしまった。
そのため今パワプロのサクセスを新たに出してもそれらはウマ娘と比べられてしまいます。
野球と美少女競馬を比べるのはおかしいと思うかもしれませんが、人は進化の違いは分からなくとも退化には拒絶反応を起こしてしまう生き物です。

テレビを買い替えて画質の違いなんて分からなくても、今ブラウン管やアナログ放送のテレビの画質は見れたもんではないのと同じで人は体験をベースに物を比較します。
 
パワプロが面白いサクセスを作るためにはウマ娘を超える、あるいは並ぶ必要があり、今のコンシューマパワプロにはそれは到底不可能なのです。
せめてシャニマスクラスに「ゲームとして面白い」サクセスを作ってようやく同じ舞台に上がれますが、努力はできても工夫はできない風見鶏の(以下略)KONAMI開発チームにそれはドダイYS無理な話です。


 

と、ここまで辛辣なことを書きましたが、ぶっちゃけウマ娘より面白いゲームを作る必要はありません
サクセス一本槍で勝負するアプリゲームと違ってパワプロは総合ソフトです。 
マイライフは息してませんが対戦できてチームが作れて栄冠ナインもありペナントもありパワフェスもある。色々な面で勝負すればOKなのです。現にパワプロ2016のサクセスはそんなに良いもんでもありませんでしたがパワプロ2016は名作なのです。
 
しかしあんまりにもつまらないサクセスでは足をソフトの足を引っ張ります。
さっき引き合いに出したパワプロ2016もサクセスとしたら一定の面白さはあります(2018は一定の面白さも無かった)
 
恐竜的進化でユーザーの目が異常に肥えた昨今、面白いサクセスを作ることは不可能ですが良いサクセスを作ることはできます。
その秘訣を探るべく、日本一のゲームことウマ娘の「面白さ」を解析していきましょう。
 
 
 
 
ウマ娘の面白さ
 
  • デッキシステム×豊富な育成キャラ×テンポ

例えばエアグルーヴは選択肢でエアグルーヴの体力を回復するか仕事に専念させて能力を上げるかのイベントが多数用意されている。マイルレースに出走するのにマイルBだったり、ゲーム的には短距離に適正があるのに本人の短距離はCであるなど因子継承での工夫が求められるキャラ。
 
ウマ娘は育成キャラが豊富に用意されていることが特長の一つに挙げられます。
キャラ毎に膨大なセリフが収録されておりキャラが変われば挑戦するレースが代わり立てるべき計画や組むべきデッキ果てはプレイヤーの分身であるトレーナーの人格も全く変わります。
 
これにより飽きが来にくく(あくまで比較的な話。周回前提のソシャゲである以上いつか飽きは来る) サクセスが単調にならないという作りになっている。
キャラクターがいて個性があるというのはシャニマスも同様ですが、シャニマスよりもウマ娘はよりキャラクターの特長を強調している。距離適性馬場適性に始まり脚質適正、起こるイベントなど千差万別です。
 
これが俺の山羊座だ!

 フレンドから1人だけ借りられる因子継承とサポートの組み合わせは千差万別でそれぞれの手持ちに合わせた構築が求められます。
強いキャラを作るのは一見上振れ待ちの運ゲーの様にも見えますが、知識による構築や実際の練習やレース採択によるプレイングが大きく関わってきます。

 
画像は借り物

またウマ娘のゲーム性を語る時にテンポの良さは欠かせません。
ウマ娘は育成開始から育成終了まで20戦前後のレースに出走する必要があるなど1育成のボリュームはかなり大きいです。
しかしあらゆる部分で軽量化を図っており、例えば上の画像はメジロライアンですが、顔の造形は細部まで拘っているのに対してスク水の部分はかなり大雑把に作られているのが分かります。
 
このように随所で軽量化を図ることで、ハイクオリティスマホゲームでありながらも場面転換がシームレスかつサクサク動き高機動のサクセスを実現しています。
URAシナリオなら慣れれば20分、アオハル杯は30分で周回が可能でこれは1育成のボリュームに対して破格です。(まあ30分って長いけどね)
 
スマホゲームのウマ娘がこれだけテンポが良いのにコンシューマの潤沢な性能を使えるパワプロはやたらローディングが長くサクセスはモタモタしています。
PCゲームでもPCの性能が高くともゲームの最適化が甘ければ動作が重いゲームになってしまうように、大事なのはスペックではなく最適化と工夫であることが伺えます。


ウマ娘の観客

よく見るとほとんどまともに描かれておらずただの棒。軽量化を第一に考えていることが分かる。
 
 
 
 
 

 
一方その頃パワプロは観客をトイレに並ばせていた
 
 
 
 

  • 数字がポコポコ上がる


皆さんはゲームの面白さってなんだと思いますか?
魅力的なキャラクター? ダイナミックなグラフィック? 伏線が随所に散りばめられた思わず唸らせられるシナリオ?
うんうん、それもまたゲームの大事な要素ですね。でも本質ではないありません。
ゲームの本質的な面白さ、それは「数字がポコポコ増えて面白い」です。

ゲームの面白さの基本は数字がポコポコ増えることにあり、基本的にゲームの面白さとは数字ポコポコと数字ポコポコ以外に分類できます。
ゲームに根ざした面白さとは数字をやり取りする快楽に他なりません。この思想のみを抽出したエキスがクッキークリッカーです。クッキークリッカー、面白いですよね(虚ろな目)


話を戻しましょう。ウマ娘はこの数字のやり取りにより快楽の扱いが上手いです。
練習するたびにドンドン能力値は成長していきますし、イベントが起これば能力値が増え、レースに勝てば能力値が増え……ウマ娘をプレイしていると数字のやり取りが気持ちよくてもう脳はまともに考えることすらできません。この時脳みそは完全に溶けています。

こうした数字のやり取りを上述の異常なテンポの良さでハイスピードで進める。
気持ちよくないわけがない!  立派な電子ドラッグです。
 
 
この気持ち良い数字のやりとりを生み出した本家パワプロはどうかというと、何か近作から硬派な宗教に目覚めたのか1ターンに貰える経験値は少なくなり練習でもそんなに経験値が貰えません。
友情タッグ&友情タッグ&彼女来訪キタ―――(゚∀゚)―――― !! 経験点100!!! という快楽はありません。
 
ウマ娘が各所からドバドバ金が流れ込んでくるグループ企業の大社長的なサクセスとすると、パワプロは毎日代わり映えのしない練習とバイトを繰り返す公務員みたいなサクセスです。
そういうコツコツ練習して選手を強くする的な思想はいいんでもっと数字のやり取りで脳内麻薬がドバドバ出るサクセスが必要でしょう。
何なら経験点の桁を上げて9999ポイントまで貯められるようにして、能力UPに必要な経験点は10倍。練習の効果量も10倍で1回の練習で200、300の経験点が手に入るだとかそういう欺瞞もあってもいいはずです。
 
赤字国債発行してインフレ起こせーい! 余分な国有地はドンドン売っぱらえー!
 
 
 
  • キャラがかわいい
 

 
 
まあここは参考にできません 
 
 
  • 曲が良い
 
 
UNLIMITED IMPACTすき
 
 
どの曲も素晴らしいですが私はユメヲカケル! の歌詞に並々ならぬ物を感じてなりません。
一見するとアニソンらしい気持ち良い清涼感に溢れた前向きソングですが歌詞の中に競馬ファンが思わず涙ぐんでしまうファクターがてんこ盛りです。


キミと夢を重ねてる
 
これはお互いに同じ夢を目指すライバルであり仲間である友情を歌いつつも、出走する馬たちに勝手に想いの数々を託す観客として我々の姿にも重なっている凄い歌詞です。
時に競走馬たちは我々の思いよらぬドラマを作り上げその光景が「夢」となる競馬というスポーツを歌っています。

キミと夢をかけるよ

これは賭博の暗喩です。駆けると賭けるがかかっています。




パズルのような これからと今と昨日があって
 
 
過去の様々なドラマが交錯して現在に至る競馬界について語っている歌詞ですが、わざわざ「パズルのような」と付けているのでこれは血統地図について言及だと分かります。
 




 血統は難しく、一見するとクラっともしてしまいますが競馬を楽しむ上ではあまり気にする必要はありません。
しかし競馬はブラッド・スポーツであり、その根幹には間違いなく血統の存在があります。
血を巡り血を研究し試行錯誤を繰り返してきた中に今の競走馬があり、そしてその中からまた新たな未来が生まれていくという競馬の構造を見事に捉えた歌詞です。
 
 
変えられるのさ Destiny
限界だって 超えてみせる
 
 ウマ娘は競馬をリスペクトしたコンテンツですが、唯一競馬に対する反逆とも取れる「正史の改変」を行うコンテンツでもあります。
2期でトウカイテイオーと再戦を誓ったメジロマックイーンは天皇賞の4日前に靭帯炎で引退を余儀なくされ、ライスシャワーは淀に、サイレンススズカはケヤキの向こう側に沈んでしまった。
ある有名漫画家兼有名エ○ゲサイト管理人も言うてましたね。オグリキャップ、トウカイテイオー、ナリタブライアンの強い馬に魅せられて競馬に入ったら実力馬が全く勝てずクラシックは波乱の連続。やっと強い馬が出てきたと思ったらテレビの前で命を落とす。こんなんトラウマになるでと。
 
競馬というのは美しいドラマである一方、非情な悲劇でもあります。これは避けられない宿命でもある。
ウマ娘というのはその競馬を扱いつつ、「ホントはこんな未来が良かった」というIFに積極的に加担していく。それは歴史をないがしろにするようでありつつ、馬が好きな人たちが心のどこかで望んだ未来でもある。そういう背景を考えてから
 
変えられるのさ Destiny

という歌詞を聞くとどうにもグッときて仕方がない。
ユメヲカケル! の作詞はマイクスギヤマさんという多くのアニメソングを手がけられている方ですが本当に素晴らしい歌詞だと思います。ありがとうマイクスギヤマさん。


パワプロの話に戻りましょう。パワプロも音楽はかなり良いです。ここは流石KONAMIというべき部分でパワフェスなどの最終決戦ではOPのアレンジを流すなど「燃える」音楽の使い方がプレイヤーの気持ちを掴んでいます。
音楽が強いというKONAMIの得意分野を存分に発揮していますね。



  • ロリ巨乳キャラが多い

 
ここもパワプロは参考にできません。
 
 
 
 
乳袋

 
乳袋とは胸が突出して服が胸を丸々カバーするようにその下に食い込むという現実では中々ない二次元特有の描写ですな。00年代~10年代初頭のエ○ゲ制服で一世を風靡しました。
 
常に間違ったことしか言わないことでお馴染みインターネットでは少し前に玄人ぶった二流が乳袋はリアルじゃないと宣っていたが、ウマ娘が覇権を取ったことでお分かりのように乳袋が最も優れたキャラクター衣装様式であることは疑う余地もないだろう。
乳袋で強調された胸がブルンブルンと揺れまくる。結局コレなのよ





 
 
  • ランダム要素による上振れの射幸的快感
 
画像は借り物

 
パワプロにもダイジョーブ博士というランダム要素がありますがウマ娘は格が違います。
まず友情トレーニングの占める割合が大きく、これらの編成したキャラが望んだトレーニングに来るか否かで大きく最終ステータスが変わってきます。
また一部の金特の取得確率もイベント発生時にステータスを参照した上で運次第となっています。こんな仕様パワプロに入れたら非難轟々ですが、周回前提のアプリだからこそ許される(許されてるか?)仕様ですね。
また取得確率がステータスに依存してるというのもニクい部分で、序盤にイベントが進行した場合はどうにもなりませんが、終盤にしっかり対応ステータスを上げた状態でイベントを起こせば9割は金特を取得できます。
SSRたづなの最終イベントを起こす前に取れるスキルは全部取っておくというコツは基本的ですね。
また芝S、距離Sなど適正を上げるのも継承時の運次第です。継承でSに上げるためにはより良い親を用意する必要があるのですがそれも運次第なので、運を良くするために運が必要となるという中々イカれたゲーム性になってます。

これらのようにプレイヤーに運によるストレス要素を与えつつ、それらをある程度プレイングでカバーできる要素にまとめているのがウマ娘の上手いところです。
ストレスと一口に言うと悪い要素と捉えられがちですが、面白いゲームにはストレスが必要不可欠です。
ウマ娘は見事な配分でストレスと面白さが同居していると言えるでしょう。
逆にパワプロはストレスまみれです。
 
まずケガ率。ウマ娘は体力が50を切るあたりから徐々にケガ率が数%から上がっていきますが、パワプロは60、70とある状態からもうケガ率が発生してます。
また怪我が起こった場合、ウマ娘は数%の怪我ならほとんど能力低下はなく体力も減りませんが、パワプロは体力をガッツリ減らした上で経験点を下げてきます。ちょっとゲームとして歪です。
 
ウマ娘の「金特の取得がランダム」「上振れするかどうか」「良い継承ができるかどうか」はプラス要素の運ですが、パワプロの故障するか、しないか(したら大ダメージ)というのはマイナス要素の運でしかないので、プレイヤーにとってはストレス要素でしかなく全く面白さ(快楽)に寄与しません。
 
ウマ娘はストレスにしかならない要素をなるべくカットした上で、ストレスと快楽を天秤にかける要素を随所に配置しています。パワプロはストレスにしかならない要素が野ざらしのまま放置されており、ストレスと快楽を天秤にかける要素が全くありません(ダイジョーブ博士ぐらい)
 
 
更に意味不明なのはパワプロの「怪我率が高ければ高いほど得られる経験点が高くなる」という仕様です。これ考えた人は本当にどうかと思います。最悪です。パワプロ史上最もクソな要素です。
この要素は一見リスクとリターンを天秤にかけてプレイヤーに選択肢を与える要素にも思えますが、怪我で体力と経験点が削られるデメリットと数点経験点が増えるメリットが全く釣り合っていません。
つまり損得勘定を考えた結果、「故障率が高い場合は練習を回避する」というのが正しい選択になるのですが、上述したようにパワプロはHP60の時点でもうケガ率が8%とかそこらへんの領域にいってしまうので、ここで回復をしてしまうとHPが余ってしまうんですね。
 
損得勘定を考えた結果安全に育成したのにそれが最適解にならないという本当にダメな仕様になっています。
体力効率を考えると体力60でケガ率5~9%あっても練習させるのが正解なのですが、この場合大して美味しくもない練習なのに常にリスクが付きまとうというストレスがかかります。
現行のパワプロの仕様はリターンがないのにリスクだけを強いる本当に酷いシステムになっているので、少なくともこの「怪我率が高ければ高いほど得られる経験点が高くなる」という仕様だけでも無くすべきですね。
 
ウマ娘が上手いのはキャラのことを考えて安全に育成することが多くの場合育成の最適解となることです。
時にリスキーな練習に突っ込ませることを考慮する場合がありますが、その場合は友情タッグが大量に集まっており膨大な能力値が得られるのでリスクに応じたリターンが伴っています。



周回前提のアプリは1回の育成が重いコンシューマに対してリスキーな選択肢に対して割と寛容な媒体なのですが、ウマ娘は怪我へのマイナス要素が小さく、逆に1回の育成が重いパワプロは怪我の影響力と確率が高すぎて常にリスクを背負わなければならないというチグハグな構造になっています。
 
昔のパワプロは怪我も醍醐味の一つで、大怪我をしたら即引退ゲームオーバーなどそれが「味」になっていた部分もありますが、昨今の恐竜的進化を遂げたサクセスでは時代遅れです。怪我をしても能力とやる気がちょっと下がるだけで体力は減らない。が現代のサクセスです。
 



 
 

感動

 
ウマ娘は感動します。それはアニメの1シーンかもしれませんし、曲を聞いてる時にふと歌詞が滲みる時かもしれません。
しかしことゲームのウマ娘で感動する瞬間といえばシナリオでの感動とURA決勝を突破したときの感動(即ちうまぴょい伝説であろう!)の2つが多いと思います。
 
キャラが多いながらもウマ娘のシナリオはよく練られており、バカなシナリオから熱いシナリオ、感動するシナリオなど豊富なパターンがあります。ハルウララシナリオは日本語が分かる奴なら100%泣くだろう。
 
今回注目したいのはもう一つの感動。URA決勝を突破してうまぴょい伝説を聞いたときの感動です。
ウマ娘は開始段階ではかなり難しいゲームであり、サポート札が揃っていない(そしてゲームシステムの理解が浅い)状況ではシナリオクリアはおろか菊花賞(3000m、長い)すら突破できません。
その高いハードルを乗り越えて感動に浸ってると突然垂れ流される電波曲、歌うのは一生懸命育てたウマ娘。
 
これは泣かないはずがないだろう。私はサクラバクシンオーでURA優勝した時は声を出してもうグチャグチャな感情でうまぴょい伝説を聞く羽目になりました。


うまぴょい伝説は一見奇抜な曲ですが、この一連の流れの根底にあるのは「高いハードルを用意して」「苦労の末クリアした直後に」「メインテーマを流す」という極めてシンプルな演出です。
うまぴょい伝説自体はURAをクリアしないとゲーム中では聞くことができませんが、ゲーム内のあらゆるBGMがうまぴょい伝説のアレンジであるため「この曲、初めて聞いた曲だけど魂は知ってる!!!」という効果が生まれます。
 
人間には触れれば触れるほどその対象が好きになるという単純接触効果という心理現象がありますが、ウマ娘はうまぴょい伝説をBGMアレンジしゲーム内の至るところで聴かせることで「初見時の感動」「単純接触効果で好きが積もり積もった状態」を両立させることに成功しているんですね。
このテクニック自体はウマ娘に限らずオモロイゲームやアニメでは大体使われているので、そこに注目して見てみるのも面白いですよ。
 
さて、ウマ娘は感動する。ウマ娘で感動するのは演出の巧みさであるという話をしました。
パワプロではこの演出はパワフェスが優れています。
 
試合時の盛り上がる演出、興奮を全面に押し出す熱盛宗厚の実況などもそうですが、初見時では敵がかなり強く、周回前提とすることでラスボスの強敵感を印象付け、成長要素によって周回するたびにプレイヤーが上手くなっていると錯覚させ確実に強くさせるなど様々なゲーム的に効果的な工夫が使われています。
これによって強敵だったラスボスを倒したあとに流れる凝った演出でプレイヤーはグッとくる、という寸法です。 
 
 
おそらく開発者が違うためだと思われますが、パワフェスのようなグッとくる演出はサクセスになるとトンと見られなくなります。
ペナントやマイライフで使われる優勝演出を使い回すだけでラスボスを倒したという特別な感動は全くありません。 
主人公は「俺たちが…優勝? や、やったーーーーーーーー!!」みたいなことを言いますが特別な演出は全然ないので感動に乏しいです。
シナリオやゲーム性でも上記で述べたようなグッとくる伏線や工夫もなく、達成感を与えようという気持ちを全く感じません。人気者がつくだけです。
 
せめてパワフェスの様にキャラクターが集まって円陣を組んだり、試合開始前に守備位置につくそれぞれのキャラを1人ずつ写したりするようなプレイヤーの胸を熱くさせるような演出があればいいのですが、一切ありません。
サクセスの決勝戦を熱盛宗厚が実況することがありますが、本当にただ熱盛宗厚が実況してるだけなのでパワフェスで感じたような興奮や熱狂をサクセスで味わうことは難しいです。
 

サクセスの決勝戦が熱狂に欠けるのはゲーム性にも問題があります。
試合の操作モードを選べるのはユーザーに対して親切ですがゲームの面白さを著しく削いでいます。
例えば「自分の打席だけを操作する」を選んだ場合、3~4回打席に立って勝利するか敗北するかが決まります。
こんなんで感動できるわけがありません
パワフェスやパワポケが決勝で勝つと大きな達成感を得られるのは全員(に近い人数)を操作して試合に勝つからです。
 
操作方法を選べるのは便利ですが、便利なだけで全く面白くありません。 
そして面白さを犠牲にして得たその便利さもそんなに便利なわけではないというのが今のパワプロのサクセスの現状です。
 
 
 
 
終わりに
ここまでパワプロのことを随分ボロクソに言いましたが、残念ながらこれが今のパワプロのサクセスの現在地です。
パワプロ2020は良いゲームでしたが、ことサクセスにおいてはパワプロがネットの声に振り回されて前進したり後退してる間に近年恐竜的進化を遂げた「サクセス系育成ゲーム」に対して大きく遅れを取ってしまいました。
iPhoneの時代にウォークマンでカセットテープ聞いてるようなものです。
 
 



さて、ここでようやく本題のパワプロ2022の話ですが前情報を見る限りこれまでのサクセスとは随分ゲーム性が異なっています(特にアオハル高校)
このゲーム性の変更が吉と出るか凶と出るかは分かりませんが、少なくとも2016、2018、2020のような「ドンドンパワプロというゲームは良くなっていくのに、サクセスだけ方向性が右往左往してつまらなくなっていく」という闇の歴史からの脱却が期待できそうで私はこの変化は喜んで支持します。
 
女の子が可愛くておっぱいがブルンブルン揺れてレースで燃えてシナリオで感動するウマ娘より面白いゲームを作るのは不可能ですが、良いサクセスを作るのはそんなに難しいことではないはずです。
 
そもそもガチャを回させて収益を得るためにプレイヤーに繰り返し周回を要求しなければならないアプリゲームと違って、パワプロは3~4回遊んで「あ~面白かったw」と言わせるゲームを作ればそれでいいのです。
アプリゲームよりコンシューマの方が求められるハードルが低いというのは皮肉な話です。
 
 
これまでのサクセスには全く進化や熱意を感じることができませんでしたが、ゲームの雰囲気やゲーム性が3つのシナリオでガラリと変わりそうな2022のサクセスはかなり期待しています。
「ウマ娘より面白いサクセスなんて作れない」などとのたまってるアホをアッと言わせるようなオモシレーサクセスができた暁には手のひら返して毎日KONAMI本社のある方向へ拝む所存です(ま、不可能だろうがね…)
 
 


パワプロ2022、期待してるぜ!
 
 





 
 


10 件のコメント:

  1. ウマはエ口がダメだからダメ

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  2. 私も長文のコメントご容赦下さい。

    私はもっぱら栄冠ナインで選手を作っており、
    "運動神経悪い芸人"などのネタ選手ぐらいしか
    通常のサクセスでは作っていません。
    それはすなわち"もう通常のサクセスでは
    ちゃんとした選手は作れない"という
    諦めの証とも言えます。
    そういう私の様なユーザーが増えた事が
    "サクセス<栄冠ナイン"という
    流れに走らせた可能性もあると思います。

    栄冠ナインも栄冠ナインで、
    全都道府県にAランクの化け物が
    満遍無く存在するのは是正して頂きたいです。
    コナミは大阪発祥の会社の筈なのに、
    何故リアルな高校野球で大阪府&兵庫県からの
    越境入学が後を絶たないのかが
    解っていないのではないでしょうか?
    それは取りも直さず、地方にはAランクの学校が
    少ないor無いからに他なりません。
    いまだ春夏通じて全国制覇未経験の東北地方、
    (それ故今尚"白河以北は一山いくら"と
    言われています)及び春は一度きりで
    (それも記憶に新しい2015年の敦賀気比)
    夏は東北同様に全国制覇未経験の北陸地方には
    Aランクは存在しないといっても
    過言では無いでしょう。
    全都道府県に満遍無くAランクが存在していたら
    東北地方も北陸地方も何度となく
    全国制覇している筈です。
    コナミはそのあたりが解ってないと思います。
    極論から言うと
    "大阪府以外にはAランクは存在しない"
    ぐらいでもいいとさえ思います。
    (サッカーでは青森山田高校が
    この冬全国制覇したので
    "白河以北は一山いくら"とは言われていません)

    ですが一方で、大阪府&兵庫県の1995年1月、
    福島・宮城・岩手3県の2011年3月、
    熊本県の2016年4月は何事も起きなかったので、
    2020年は春も夏も大会が行われず、
    以降はマネージャーが常時マスクを着用し、
    挙句の果ては部員が感染して
    練習自体が出来ないなどという事は
    ことパワプロの栄冠ナインにおいては無い筈です。

    私が"2022"で気になっているのは
    "チームアレンジで選手兼任コーチは可能か?"と、
    (滅多に無い選手兼任監督が可能なのに、
    珍しくない選手兼任コーチが出来ないのは
    おかしいとしか言いようがありません)
    "ペナントで1リーグは可能か?"という事です。
    昔は出来た筈なのですが、
    いつの間にか2リーグ固定に戻されています。
    2リーグのままなら、DHの有無を統一するとか
    (私がやりたいのはセ・リーグもDHを使うのでは無く、
    逆にパ・リーグを9人野球に戻したいのです)
    交流戦の有無&試合数を選択可能にして欲しいです。
    あとあづま・坊っちゃん・マスカットの3球場が
    2022でも実装されているかも気になります。

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    1. 完璧に理解しました。
      栄冠ナインめっちゃ面白いのが理由だと思います。

      地方差のレベルは地元の大阪で始めた小学生が泣いたり、逆に地方で始めた地方民が手応えのなさにガッカリすることのないようにゲームバランスを勘案した結果なので仕方ないと思います。
      「高校野球を再現したゲーム」と「栄冠ナイン」は明確に違い、栄冠ナインは面白さを重視する方向に舵を取っているので「地方の実力格差を再現する」という方向に向かってもあまり良い結果はないと思います。

      勿論栄冠ナインも完全無欠のゲームではないので「面白さ」と「ユーザーの間口の広さ」と「リアルらしさ」を兼ね備えたアイデアがあれば是非KONAMIの問い合わせ窓口に要望を送ってください。
      https://ja-support1.konami.com/hc/ja/requests/new?ticket_form_id=900000143646

      1リーグ制についてはここで言っても仕方ないのでKONAMIの問い合わせ窓口に要望を送ってください。
      https://ja-support1.konami.com/hc/ja/requests/new?ticket_form_id=900000143646

      KONAMIのパワプロスタッフは自分で面白い仕様を考える能力はそこまでありませんが、ユーザーの要望を取り上げて実装する気概は最近見せており、ユーザーに良いアイデアがあるならドシドシ要望を送るのが正しいファンボーイの姿勢だと思います。

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  3. そんなにウマ娘が好きならパワプロやめたらどうです?
    パワプロのストーリーは別に好きじゃないんでしょ?再現選手作りたいだけならコナミに「エディット」つけてくださいって言う要望送ればいいじゃないですか

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    1. 「面白いサクセスがやりたい」「面白いサクセスを作って欲しい」
      という意図の文章を書いたつもりですがそのような解釈をされてしまうとは私の文章力の至らなさに猛省するばかりです。
      今後人によく伝わる文章を書けるように精進して参りますので、お前も一般的な国語力を身に着けられるように共に頑張りましょう。

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  4. パワプロやウマ娘に対する愛が感じられる良い文章でした。
    これからも応援しています。

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  5. パワプロの記事かと思ったらほぼウマ娘の話だった

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  6. なお訴えられた模様

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  7. パワプロは残念ながらもうオワコンです。これ以上良くなる事は無いでしょう。サイゲにパワプロ作って欲しいくらいです。今のパワプロには(野球愛)を持っているスタッフが感じられません

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